VOICE OF LAKES#16―藤原隆充(2)
VOICE OF LAKES第16回。
今回は、キャプテン・ワラにプレイオフを総括してもらいます。
琉球戦、なぜ勝てなかったのか。
その原因は、どこにあったのか…。
レギュラーシーズンからの総括も含めて、語ってもらいました。
―ズバリ、琉球戦の敗因は、どこにあったのでしょうか。
ひとことで言えば、気持ちが入りすぎたところが大きい。
特に、初戦の1Q、0-9になってしまった場面にそれは集約される。
オフェンスの共通認識が欠け、約束事にないシュート、そしてそれを外す、というオフェンスが続いてしまった。京都戦もそうだったけど、沖縄での1戦目も気負いがモロに出てしまって、オフェンスもディフェンスも本当にちぐはぐだった。
あの日に限って言えば、好調だったユウ(岡田優)、ペップ(ジョシュ・ペッパーズ)なんかが出てきたベンチメンバーのユニットのほうが、まだチームとして機能していた。だから追い上げもできたんだけどね。それでも、レイクス全体としてちぐはぐだったのは変わらない。
言い訳めいてしまうけど、個人的にはアウェーで行って、土曜日に昼の1時に試合、というシーズン中にやったことのない日程にもリズムを崩されたかな。
もちろんそれも含めて向こうのホームコートアドバンテージなんだけどね。
そんなことも含めて、ホームで戦って、勝って有明にいける地区1位、2位に入らないとダメだなと改めて感じた。「たられば」に過ぎないんだけど、たとえば1位に入って、ホームで勝って、そのまま有明に行く、という状況が作れていたら、シーズンの結果はぜんぜん違うものになっていたと思う。
―デイビッド・パルマー、小菅直人の両選手にいいところでシュートを決められました。
パルマーが本当によすぎたよね。
正直「シュート入りすぎだろ!」って思ったからね。
レイクスでいうと、パルマーはゲイリー(・ハミルトン)、ラマー(・ライス)で守るしかないんだけど、ゲイリーが(本来のプレイエリアである)ゴール下のペイント内からだいぶ外に引っぱり出されて、つききれない。そこからゲイリーのいないインサイドにパスを入れられたりもしたし、それがディフェンス面ではしんどかったな。
そして小菅。
いい位置でもらってたし、よく決めていた(注:第1戦、フィールドゴールは5本全て成功)。彼は新潟時代のチームメイトだったからよく知っているんだけど、本当にボールのもらい方が上手いね。
―京都戦の第2戦で、いい流れができていたと思ったのですが…。
僕自身も第2戦、すごくいいチームプレイができて、「チームになった」と感じた。
だけど、プレイオフ、負けられない、後がない、という状況がそうさせただけなのかもしれない。
いま思えば、京都戦の勝利で得た満足感を引きずり過ぎないように、琉球戦の前に一度、もっとしっかり仕切りなおすべきだったかな、とも思う。
(キャプテンとして)あのあとの最初の練習で、一喝する必要があったのかもしれない。
京都戦の勝利で「いける」と思ったところを、上手くつなげられない。
レギュラーシーズンでも、土曜大勝したのに、日曜は大敗する、あるいはその逆…なんてパターンがあったからね。琉球もよかったけど、レイクスの悪いところが出てしまった、という方が大きかった。
いろんな意味で、プレイオフの好不調の波は、今年のレイクスを象徴していたと思う。
―これは、シーズンを通しての弱点だったと?
認めざるを得ないんだけど、シーズンを通してレイクスには安定感がなかった。
スターター、プレイタイムの多いメンバーのほぼ全員が得点できる選手で、ともすればすぐにボールを長く持ってしまって、オフェンスが一人よがりになって停滞するリスクがある。でも、それをきっちりコントロールして、ボールのシェアができた日はすごく強かった。もともと能力は高いんだからね。だけど、ボールのシェアができない日は「個」としてのオフェンス頼みになり、その成否が勝負を決める。
単純に言えば、打ったシュートが入れば勝つし、入らなければ負ける、ということになる。
これでは、安定感を望むのは難しい。
それと、これは怪我が大きいんだけど、しっかりと戦術を作りこむことができなかった。
例えば、ヘッドコーチが根間代行に交代した後の3月、ペップとマイキー(・マーシャル)を同時に出すフォーメーションの成果が明確に見えた。インサイドに割って入ってフリースローをもらって、高い確率で決めるペップと、それより少し外のエリアを中心にプレイして、レーンが空けば中に切れ込んでくるマイキーのダブルウィングは相手にすごいインパクトを与えることができた。
だけど、あれも2人を同時に出すとフロアバランス上、どうしてもリバウンドが弱くなったり、ディフェンスで少しバランスが悪くなるリスクがある。そこを埋めるためにゾーンディフェンスを敷くとか、ヘルプとローテーションの精度を上げるとか、3-4月の間にしっかりその対策を練り上げるべきなんだけど、そこが不十分なうちにペップが怪我してしまった。ペップが加入した2月には、直後にマイキーが怪我をしてしまったしね。
―レイクスの課題は「作りこみ」にあるということになりますか。
そうとも言えるね。
たとえばファイナルに進出した浜松、琉球はそういうプレイが多い。
比較的同じメンバーで長くやっているというのもあるんだろうけど、自信をもって展開するプレイ、フォーメーションの数が多く、一つ一つがきちんと練られている。誰かが個人で状況を打開するというのとは違って、「困ったときでも、きっちり得点を取れるチームプレイ」があるんだ。
それが多ければ多いほど、チームは安定した戦いができる。
琉球は一人ひとりがボールを長く持つのでなくて、何度も持つ。ボールを回して、何度もね。外国人も、日本人も、みんながロールプレイヤー(与えられた役割をしっかり果たすプレイヤーの意。自らの得点にこだわらないプレイヤーを指すことが多い)という感じだった。
レイクスの場合は、1on1で状況を打開できてしまうメンバーが多いから、どうしてもそれが試合中に出てしまう。苦しい展開になると余計、そこに頼るプレイをしてしまう。パスをしっかりまわす、チームとして誰かに打たせる、周りがその状況を作り出すべくスクリーン、リバウンド、ボールのないところの動きをしっかりとこなす…。それができて、高い能力を持つ選手が、ロールプレイヤーの集まりとしてチームとして機能すれば、すごく強かった。
実際に、そうなった試合もあった。
京都戦のようにね。
―来季に向けては。
しっかりコントロールの効いたチームになる必要がある。
過去3シーズンで、一番可能性を感じさせるメンバーだった。あとは、さっき言ったように、しっかり役割を分担して戦えるようにチームをコントロールできれば、それぞれの能力はすごく高いし、無敵だと思う。
だけど、今年は機能する試合と機能しない試合を行ったりきたりして、チームとしてのスタイルを確立しきれなかった。
その安定感のなさが、プレイオフの戦いにも出てしまった。
能力の高さがありながら、そういうチームを作り上げきれなかったのは、キャプテンとして悔しいし、いち選手としても、人間としても悔しい。
力不足を痛感したよ。
なかなか難しいとは思うけど、もう一度、このメンバーでやりたいね。
それは挑戦でもあるけど、可能性を感じるから。
(編集後記)
ワラの悔しさが伝わってくるインタビューでした。
メンバーの能力は過去最高、でもそれを生かす戦い方を確立するのは難しい。
その難しさは、シーズン前からわかっていて、それが、記者会見での「想定内」という発言につながったんだそうです。
それだけに、そこを打開できなかった、という悩みは深いようですね。
レイクスとして、この課題をどう克服するか。
それが、来シーズンへ向けての第1歩かもしれません。
今回は、キャプテン・ワラにプレイオフを総括してもらいます。
琉球戦、なぜ勝てなかったのか。
その原因は、どこにあったのか…。
レギュラーシーズンからの総括も含めて、語ってもらいました。
―ズバリ、琉球戦の敗因は、どこにあったのでしょうか。
ひとことで言えば、気持ちが入りすぎたところが大きい。
特に、初戦の1Q、0-9になってしまった場面にそれは集約される。
オフェンスの共通認識が欠け、約束事にないシュート、そしてそれを外す、というオフェンスが続いてしまった。京都戦もそうだったけど、沖縄での1戦目も気負いがモロに出てしまって、オフェンスもディフェンスも本当にちぐはぐだった。
あの日に限って言えば、好調だったユウ(岡田優)、ペップ(ジョシュ・ペッパーズ)なんかが出てきたベンチメンバーのユニットのほうが、まだチームとして機能していた。だから追い上げもできたんだけどね。それでも、レイクス全体としてちぐはぐだったのは変わらない。
言い訳めいてしまうけど、個人的にはアウェーで行って、土曜日に昼の1時に試合、というシーズン中にやったことのない日程にもリズムを崩されたかな。
もちろんそれも含めて向こうのホームコートアドバンテージなんだけどね。
そんなことも含めて、ホームで戦って、勝って有明にいける地区1位、2位に入らないとダメだなと改めて感じた。「たられば」に過ぎないんだけど、たとえば1位に入って、ホームで勝って、そのまま有明に行く、という状況が作れていたら、シーズンの結果はぜんぜん違うものになっていたと思う。
―デイビッド・パルマー、小菅直人の両選手にいいところでシュートを決められました。
パルマーが本当によすぎたよね。
正直「シュート入りすぎだろ!」って思ったからね。
レイクスでいうと、パルマーはゲイリー(・ハミルトン)、ラマー(・ライス)で守るしかないんだけど、ゲイリーが(本来のプレイエリアである)ゴール下のペイント内からだいぶ外に引っぱり出されて、つききれない。そこからゲイリーのいないインサイドにパスを入れられたりもしたし、それがディフェンス面ではしんどかったな。
そして小菅。
いい位置でもらってたし、よく決めていた(注:第1戦、フィールドゴールは5本全て成功)。彼は新潟時代のチームメイトだったからよく知っているんだけど、本当にボールのもらい方が上手いね。
―京都戦の第2戦で、いい流れができていたと思ったのですが…。
僕自身も第2戦、すごくいいチームプレイができて、「チームになった」と感じた。
だけど、プレイオフ、負けられない、後がない、という状況がそうさせただけなのかもしれない。
いま思えば、京都戦の勝利で得た満足感を引きずり過ぎないように、琉球戦の前に一度、もっとしっかり仕切りなおすべきだったかな、とも思う。
(キャプテンとして)あのあとの最初の練習で、一喝する必要があったのかもしれない。
京都戦の勝利で「いける」と思ったところを、上手くつなげられない。
レギュラーシーズンでも、土曜大勝したのに、日曜は大敗する、あるいはその逆…なんてパターンがあったからね。琉球もよかったけど、レイクスの悪いところが出てしまった、という方が大きかった。
いろんな意味で、プレイオフの好不調の波は、今年のレイクスを象徴していたと思う。
―これは、シーズンを通しての弱点だったと?
認めざるを得ないんだけど、シーズンを通してレイクスには安定感がなかった。
スターター、プレイタイムの多いメンバーのほぼ全員が得点できる選手で、ともすればすぐにボールを長く持ってしまって、オフェンスが一人よがりになって停滞するリスクがある。でも、それをきっちりコントロールして、ボールのシェアができた日はすごく強かった。もともと能力は高いんだからね。だけど、ボールのシェアができない日は「個」としてのオフェンス頼みになり、その成否が勝負を決める。
単純に言えば、打ったシュートが入れば勝つし、入らなければ負ける、ということになる。
これでは、安定感を望むのは難しい。
それと、これは怪我が大きいんだけど、しっかりと戦術を作りこむことができなかった。
例えば、ヘッドコーチが根間代行に交代した後の3月、ペップとマイキー(・マーシャル)を同時に出すフォーメーションの成果が明確に見えた。インサイドに割って入ってフリースローをもらって、高い確率で決めるペップと、それより少し外のエリアを中心にプレイして、レーンが空けば中に切れ込んでくるマイキーのダブルウィングは相手にすごいインパクトを与えることができた。
だけど、あれも2人を同時に出すとフロアバランス上、どうしてもリバウンドが弱くなったり、ディフェンスで少しバランスが悪くなるリスクがある。そこを埋めるためにゾーンディフェンスを敷くとか、ヘルプとローテーションの精度を上げるとか、3-4月の間にしっかりその対策を練り上げるべきなんだけど、そこが不十分なうちにペップが怪我してしまった。ペップが加入した2月には、直後にマイキーが怪我をしてしまったしね。
―レイクスの課題は「作りこみ」にあるということになりますか。
そうとも言えるね。
たとえばファイナルに進出した浜松、琉球はそういうプレイが多い。
比較的同じメンバーで長くやっているというのもあるんだろうけど、自信をもって展開するプレイ、フォーメーションの数が多く、一つ一つがきちんと練られている。誰かが個人で状況を打開するというのとは違って、「困ったときでも、きっちり得点を取れるチームプレイ」があるんだ。
それが多ければ多いほど、チームは安定した戦いができる。
琉球は一人ひとりがボールを長く持つのでなくて、何度も持つ。ボールを回して、何度もね。外国人も、日本人も、みんながロールプレイヤー(与えられた役割をしっかり果たすプレイヤーの意。自らの得点にこだわらないプレイヤーを指すことが多い)という感じだった。
レイクスの場合は、1on1で状況を打開できてしまうメンバーが多いから、どうしてもそれが試合中に出てしまう。苦しい展開になると余計、そこに頼るプレイをしてしまう。パスをしっかりまわす、チームとして誰かに打たせる、周りがその状況を作り出すべくスクリーン、リバウンド、ボールのないところの動きをしっかりとこなす…。それができて、高い能力を持つ選手が、ロールプレイヤーの集まりとしてチームとして機能すれば、すごく強かった。
実際に、そうなった試合もあった。
京都戦のようにね。
―来季に向けては。
しっかりコントロールの効いたチームになる必要がある。
過去3シーズンで、一番可能性を感じさせるメンバーだった。あとは、さっき言ったように、しっかり役割を分担して戦えるようにチームをコントロールできれば、それぞれの能力はすごく高いし、無敵だと思う。
だけど、今年は機能する試合と機能しない試合を行ったりきたりして、チームとしてのスタイルを確立しきれなかった。
その安定感のなさが、プレイオフの戦いにも出てしまった。
能力の高さがありながら、そういうチームを作り上げきれなかったのは、キャプテンとして悔しいし、いち選手としても、人間としても悔しい。
力不足を痛感したよ。
なかなか難しいとは思うけど、もう一度、このメンバーでやりたいね。
それは挑戦でもあるけど、可能性を感じるから。
(編集後記)
ワラの悔しさが伝わってくるインタビューでした。
メンバーの能力は過去最高、でもそれを生かす戦い方を確立するのは難しい。
その難しさは、シーズン前からわかっていて、それが、記者会見での「想定内」という発言につながったんだそうです。
それだけに、そこを打開できなかった、という悩みは深いようですね。
レイクスとして、この課題をどう克服するか。
それが、来シーズンへ向けての第1歩かもしれません。
Posted by 滋賀レイクスターズ.at 2011年05月25日08:21